適性検査の結果は、経験と熱意、興味があれば塗り替えられる
「私はじっとしているのが苦手なので、デスクワークは無理。だから営業がいい。」という人がいます。一方、「人と話すのが苦手なのでパソコンに向かって事務処理しているほうが落ち着く」という人もいます。
おそらく、コミュニケーション能力が高く社交的な場合は人と接する営業や販売などの職種、そうでない場合はデスクワークや作業員や職人などに適性があると考えられているのかもしれません。これは、本当なのでしょうか。そこで「仕事に対する適性」について、自身の過去の経験より考えてみました。

やりたくもない仕事でも結果が出ることがある
あなたは今の仕事に対して、適性があると感じていますか?
希望する仕事について適性があれば早く仕事を覚えられるし、自分自身の能力が最大限に生かされる可能性が高くなります。やりたい仕事について「その仕事、向いているんじゃない?」と人から言われると嬉しいし、自分自身でも「この仕事に向いている」思えて自信もつきます。とはいえ、適性がない仕事にどうしてもつきたい場合・つかざるを得ない場合もあるかと思います。
ずいぶん昔のことですが、私自身は高校卒業後の適性検査で事務職の適性は低いという検査結果が出ました。そろばんを習っていた経験は事務に役立たないんだと軽くショックでしたが、いろいろな職種に対してバランスよくというか平均して適性があることがわかりました。ただ、飛びぬけて高い適性を示すものはなく、自分には取り柄がないのだと思っていました。
目標をもって受験勉強を頑張っているクラスメートに対して、将来どのような仕事をしたいという明確な考えも興味も持っていなかった私は、少し手作りが好きというだけで服飾専門学校へ進学しました。
ところが校風についていけず2年で中退して就職活動を開始。求人情報誌で「販売なのに日曜日が休み」という文句に惹かれ、また人見知りを直そうと思い立った私は全く向いていないであろうその婦人服販売職の求人に応募しました。見かけもパッとしない私でしたがなぜか採用され、社会人としてのキャリアは婦人服販売員から始まりました。
その職はでは先輩の背中を見て仕事を学ぶという方式で、大企業のような新人研修はありません。お客様に話しかけることに勇気が必要、会話のキャッチボールがうまくいかないなど、最初とても苦労しました。確認のために以前聞いたことを質問したら陰で「一度説明したのにまた質問するなんて、物覚えが悪い」と言われ悔しい思いもしました。
一年たったころ、気づけば私は同期の中では販売額がトップとなりました。私を気に入っていつも指名してくれるお客様もできました。就業30分前の出社を心がけ無遅刻無欠勤だったことでも評価をいただきました。
その時気づいたこと。その仕事に向いているのかどうかということは、自分自身ではなくその仕事を通してかかわる人たちが判断してくれるものではないだろうかということです。売上額が多いから販売に向いているとは限りませんが、自分自身が苦手に感じていることでも仕事に向き合って経験していくうちに結果が伴ってくるもので、結果が伴えば適性もついてくることなのかもしれません。
とはいえ、人と話すことに難がある私にとって販売職を続けることはつらいなという思いが消えることなく、また会社への不満から3年足らずで退職し、結婚までの腰掛として事務職に転職しました。

事務職は、その他の職種の基礎力となりえる
当時まだ昭和でしたので事務未経験で23歳だった私の転職は年齢的にぎりぎりでした。またしてもなぜ採用されたのかわからなかったのですが、電話応対が多かったので、販売の経験がプラスポイントとなったようでした。バブル真っただ中で、家庭的な小さな会社でしたがとても忙しかった記憶があります。
事務職に転職後、凡ミスが多くてやはり事務職には向いていないと痛感しました。パソコンがまだ普及する前だったので書類はすべて手書き、間違えたら訂正印を押すかやり直し・・・。会社からすればちょっと困った社員だったかもしれないけれど、好奇心があった私は販売職とは全く違う仕事に発見の連続でワクワクしていました。
それから「ワープロ」が登場し、給料1か月分をつぎ込んでテレビのような大きなワープロを買い、説明書を見ながらなんとか操作できるようになった頃、私は結婚を理由にその会社を退職しました。
事務職に転職して覚えたことは、「段取り」です。
お客様と接する販売などのサービス業も少し先を予測して準備をしておくなど「段取り」はどのような職種でも大切なことですが、状況に応じて臨機応変に動けることの方がより大切でした。
事務職はある程度作業のゴール(結果も時間も)が決まっていますので、そこまでの手順をミスなく早くやるための工夫が必要でした。事務職に適性がない凡ミス連発の私だったからこそ、ミスをしないで済むにはどうすれば?ということを意識してきたから、今はずいぶんミスが減りました。
段取りを工夫する、そして見直す。今でもきちんとできているかといえばまだまだなのですが。
適性のあるなしに振り回されることなく、興味を持ったらやってみる。機会が回ってきたらやってみる。周りの意見はどうあれ自分がやりたいならやってみる。
その仕事でしか得られない気付きや経験を積んでいくうちに、「この仕事、私に向いている」と自分自身が思えるようになっていくのではないでしょうか。適性より、興味と熱意と時間の経過とともに積みあがる経験。そうして周りの人からの評価もついてくるものだと、今は思っています。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
まなび塾 あやのはるか
